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簡単に切れちゃう

     ※ 予約投稿です


 「加害者にさせない為に」 「出禁、解禁、そして出禁

       そして、その続きです。


    実家の父が

  「お前とは親子の縁を切る! 

        と宣言をしてきました。

     8月最後の日のことです。

      そんなに簡単に切れちゃうんかいっ 

         とは思いましたが、

  それが、父がようやく導き出した解決策なのだ、

           そう感じましたね。


    車を廃車にしてから、

  父の中では多くの葛藤があったのだと推測します。

    当初はただ純粋な気持ちから、

  時が経つにつれ妄想の海の中を手探りするように、

 父はその答えを見つけ出そうと藻掻き続けていたのです。

     執拗な電話は私を辟易させました。

 鳴り続ける電話の呼び出し音に耳を塞ぎ

            家を後にした日もあります。

    私は父を捨てようとしている、 

         そう思いましたね。
    
      なぜ廃車にしたのか、

 父はただ、その理由を知りたかっただけなのです。

    「まだ使える車をどうして?」

「まだ動くのに、車が一銭にもならなかったなんておかしい」

   「売れてないなんて嘘だろ」

「売るのでなきゃ、どうして手放す必要があったんだ?」

  「売った金はどうしたんだ?」

 「売った金を〇〇(←私のこと)が独り占めしたんだろ!」 

    ここまで書いて今更ですが、

父は、全くと言っていいほど金品に執着の無い人間です。

   否、寧ろ呆れるほどのお人好しで、

 自分以外の人間に財布を開けさせることを嫌い、

    まあ見栄っ張りと言われればそれまでですが、

  大盤振る舞いして自らを大きく見せたがる……、

        そんな人間でした。
   
 「金なんてあの世に持って行ける訳じゃないから」が口癖で、

    実家を訪ねれば「交通費」と称して小遣いを出したがり、

   受け取りを拒めば臍を曲げると言った具合で、

         そんな父が

あのオンボロ車にそれほどまでの執着心を見せることなど、

     予想だにしないことだったのです。          


 父には絶対的な信頼を置ける味方が必要でした。

   寂しがりなのに強情っぱり、

      口出しされるのは嫌いなくせに

    放っておかれれば尚更拗ねてしまう……。

       どんだけ手が掛かるんだっ! 

まあ、男性の多くはこんな感じなのかもしれませんね 

  姉に、そんな父の、絶対的な味方になって貰うことを決めました。

    まあ、父のお世話を全面的に姉に押し付けた

            ……とも言えます 

      これまで父が当て推量していた通り、

 「廃車にするような勝手なことをしたのは○○(←私のこと)だ!」

    ……ということを徹底してもらうことを決めたのです。

     父のフィルターを通せば、

  姉は寡黙で従順更にはあまり行動的ではなく、

 私はと言えば鬱陶しいほどお喋りで、

       親の予想に反した行動を取りがち、

  おまけにその行動も後先考えないものばかり……。

      父からすれば、つまり私は、

  理解し難い行動を取る人間だということができます。

     なぜ車を手放さざるを得なかったのか、

   それを理解することができない父には、

      ある程度は合点のいく構図になる訳です。


   「もう家に入れるな!」

「勝手に車売って、自分の金にしちゃったんだろ!」

    「俺から車取り上げて、どういうつもりだ!」

   妹を悪し様に言う父親の姿に、

     姉はさぞかし胸を痛めたことでしょう。

 「早めにちゃんと説明しないと、事態が悪くなる一方かも」

そう連絡を寄越しては姉もまた気を揉んでいたようですが、

  それでも私は「廃車は私が独りで勝手にやったこと」

    それを曲げないようにと念押ししましたね。

  「廃車のこと、お前(←姉のこと)も知ってたのか?」

     父がそう訝しむ日もあったようですが、

    姉には口を噤むようにと言いました。

       娘二人を敵に回すような事態になれば、

   父はいったい誰を信じて生きていけばいいのでしょう。


  父は恐らく、とても哀しい思いをしていたのだと思います。

居間の擦りガラス越しに見えるオンボロ車の後ろ姿、

  その見慣れた景色をもう見ることができない、

        そういった思いもあるでしょう。

   ですが、父の気持ちを最もかき乱していたのは、

 我が子が親から車を取り上げる

  そんな愚行に及ぶような成長を遂げていたということ、

   問うても問うてもその理由は明かされず仕舞いで、

    日々頭を悩ませても自らを納得させる結論は

          得られぬままだということ。

    父は、とても疲れてしまったのだと思います。


  「お前とは親子の縁を切るから。

       お前とはもう親でも子でもないから」

   
     「マジで!? ラッキー♪」

        ……なんて言いませんよ。

  神妙な面持ちで(あっちには見えないけど)

 心痛に震える声で(寝起き早々だったし)

    「はい、分かりました」とだけ私は応えました。

   受話器を置くと、「誰から?」と夫の声が。

 「おとーさんだよ。『親子の縁を切る』ってさ~」

     「はぁ!?」

  経緯を知る夫は哀しい目で私を見ましたが、

      私はなぜか不思議なほどに、

    言い方は悪いですが笑っちゃうほどに、

      すっきりした気分を味わっていましたね。

     清々しいとも違う、さっぱりとも違う、

   なぜだか、すっきりした気分だったのです。

  私は冷たい人間なんだな、そう思いましたね。

    姉もまたひどく心を痛めていたようですが、

  私はなぜか悟りを開いた修行僧の如く冷静で

  (滝に打たれた訳でもなんでもないけど 

    これで、父の中でも解決策を見た、

  とは言え所詮妥協案に過ぎないのかもしれませんが、

       一件が落着したのだ、

そう安堵することを許されたような気がしていたからかもしれません。


   その日を境に父からの電話はパタリと途絶えました。

 存外父は、私が思うほど呆けていないのかもしれません……。






      14-07-11_1825.jpg


            幼馴染のピーちゃん。




14-07-11_1826.jpg


       最近ちょっぴり大きく(太く)なって、

    河原まで歩いてくるのがシンドイんだって    




  09-04-20_1024.jpg

    昔はとってもスリムだったのにな~。



    09-04-20_1013.jpg


      昔はよく繋がれちゃってたね 

    こんなふうに、また一緒に河原で遊びたいなぁ 





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心が痛みました…

たもつ先生、オトナですね。

とても穏やかだった方が、年令と共に怒りっぽくなる。
とても口数が少なかった方が、年とともにおしゃべりになる。
ものごとにまったく執着しなかった方が、
妙に執着するようになる。

どうも、年とともに脳が変化してくるようで、
人が変わってしまうように、思えます。

この間知人が言っていました。
「損よね~
 いろいろ我慢してきたものが
 年をとって、頑固になったとか、
 嫌われるようになって、
 それまで好き勝手してきた人が
 妙に穏やかになって、
 良い老人になるから、
 みんなから良い待遇を受ける。
 好き勝手してきた人の方がトクなんて…。
 どちらも、脳の老化現象なのにね」。

年令と共に、いろいろに変化して、
周りの者は、とまどったり、理解に苦しんだり、
悩んだりします。

人生に損、得なんて、あまりないかもしれないですが、
たもつ先生、損な役回りを引き受けているようで、
心が痛むのですよ。

ちっとも、冷たいなんて、思わないですよ。
あまりご自分を責めないでくださいね。



No title

難しいですね~
でも、確かに娘が二人共敵になるよりは、一人は味方である方がお父様のためにはいいのかも・・・

たもつ先生が我慢すればいいのだけど、頻繁に電話がかかってくるのは辛いですね。

うちの義母は86歳、いまはまだそんなにボケてないですが、少しづつ症状が出てきてます。

実の母ではないので、もしものときは夫に任せようと思ってます。
実家の両親がボケる前に亡くなってよかったかな?と思うようになってきました。

新聞に…

こんな記事が出てました。

もしも同じ新聞を購読されていたら、
もう既に、読まれているかもしれませんが…。


「父が老いていって何もできなくなってくる。
それで私が、介護する娘とはこういうものだと覚悟して、
しゃしゃり出ていく。

家の中の父の立場を引き受けるつもりで、頑張るわけです。
父によかれと思い、転ばぬ先の杖と思って、
いろんなことを変える。 決める。

すると父は怒るんです。
おれの知らないところで決めてしまうと言って。

それで気がついていく。
父なんだということ。

何もできない年寄りじゃなく、
子供の頃から頼りにしていたおとうさんが、
年取って、できなくなってるだけなんだ、
おとうさんだということを忘れずにふるまっていかないと、
父が父でいられなくなる。

そしてそれは誰にとってもつらいことなんだということ。

手間はかかっても、
父の意見を聞いて父に決めてもらうようにする。
これができるようになるのに、数年かかりました。

人ひとり死ぬのを見守るには、
生きている人ひとり分の力がいる。

ひとりで背負うのは重たすぎたんですけど、
それでも、
娘にしかできないことはいっぱいありました。

強い父は弱くもあったということを受け止めることも、
その一つでした。」



全文ではないのですが、こんな内容でした。

たもつ先生は勝手に決めたわけではないし、
きちんとお父さまの承諾も得たので、
少し状況が違いますが、
老いていく親たちには、
私たちにはわからない苦悩や、
不安が、きっといっぱいあるのでしょうね…




アルままさま

ごめんなさい、かなり陰気な内容でしたね i-201
それから、私はオトナでもなんでもないです。まあ、オバサンですけど i-237
子供の頃「お爺ちゃんお婆ちゃんになると、人は穏やかになるもんだ」と聞かされていました。
実際そういう方は多いのだと思います。
けど、それって、かな~りお年を召してからのお話。
そこに至るまでが、これ、かなりの山あり谷ありで i-202
人ってそんなに急に変わるもんじゃないですからね、「どこも変ってないじゃん」と「あれ? 変?」との行ったり来たり。
「損よね~」の気持ち、とってもよく分かりますね。
本当はそんな人柄じゃないんだよ……って説明したいけど、分かってもらうのは難しい。
これはもう脳の病気なんだと思うしかないんだけど、やっぱり遣り切れない思いは残ります。
私は損な役回りを引き受けたなんて思ってないんです。
一番大変なのは、やっぱり傍で見守る人間。
同居の大変さに比べれば、「縁切り」なんて大したことではないんですよね i-234
亡くなった母が見守ってくれてると思うし、姉がたくさん被ってくれてるし、夫やたもつや支えになってくれる人はたくさんいるし、こうして心を寄せてくれる人もいるし、私はとても幸せな方だと思っています i-260

*はなママ*さま

やっぱり、「味方」は必要だと思うんです。
父は特に寂しがりだし、周りが敵だらけになっちゃったら何するか分からないし i-201
判断力も記憶力も落ちてるから、正しいことをしてね!って求めるのも難しいような気がするし。
電話はね、すっかりなくなりましたね。まあ、これからもまだまだ分からないですけどね。
平均寿命が伸び続けてしっかりした高齢者も多くいる中、うちはもう呆けちゃったかぁ~という思いもあります。
けど、自分はもっと若いうちに呆ける可能性もある訳で…… i-202
これは病気、本人のせいじゃない……って言い聞かせて乗り切るしかないのかなと思っています。
長生きはして欲しいけどどこも悪くないままで……って思うのは、子の我が儘なんでしょうかね i-229

アルままさま

ありがとうございます i-179
うちは新聞購読してないので、とってもありがたいです。
この方の状況、とってもよく分かります。
「だって、できないでしょ? お世話してあげなきゃどーしようもないでしょ?」って気持ち、ものすごくよく分かります。
特にうちは母が何でもやってあげていたので、家事は勿論お金の管理やら何やら父は一切ノータッチで……。
おまけに私がお節介焼きだから、あーだこーだ家の中のことに口出ししちゃう。
以前姉と二人で箪笥の中身を大移動したことがあったんですよね。
父が「なんで分からなくしちゃったんだ!」って大騒ぎしましたね。
使い易くしたのにな~って思ったけど、その後は父の身の回り品には触らないようにしましたよ。
歳を取ると小さな変化について行けないのだと思います。
散らかっていても不便そうに見えても、父の良いようにさせてあげるしかないんだなと思いました。
そう、今は死ぬのを見守る段階に入っているんですよね。
色々なことを背負うのに、私1人では無理でした。
両親が姉を作っておいてくれたことに感謝です i-260
こうして素敵な記事を紹介してくださったアルままさんにも感謝です i-178
プロフィール

たもこ

Author:たもこ
生後2ヵ月で我が家にやってきた柴犬たもつ。
日々進化を続けるたもつと彼に翻弄される犬素人夫婦の日常を綴ります。
旧名たもつ先生です。
たもつ ♂ 
2007年10月19日生まれ

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