実らない秋
実家の柿の実が不作です。

先週の柿の木
薄曇りで見えにくいですが……。
写真の左上の方に2つ3つ実をつけていましたが、
実家の柿の木、今年はほとんどと言っていいほど収穫を望めそうもありません。
猛暑の影響なのでしょうか。
それとも、昨年の大豊作が影響して柿の木に栄養が足りていないとか……。
道路の掃き掃除をしていると、
見知らぬご老人と父が立ち話する声が聞こえてきました。
「葉っぱが落ちて大変ですねぇ」
「えぇ。今年は葉っぱが落ちるばかりで、実の方が全然なんですよ。
去年は本当によく実ったんですけどねぇ」
「柿は2年置きって言いますもんねぇ」
「あぁ、やっぱりそうですか。じゃあ、今年はダメですかねぇ。
去年は食べきれなくて、ご近所にも随分配ったんですよ」
昨年の秋、実家の柿の木はそれこそ狂ったように実をつけました。
金赤に染まった柿の実は瑞々しさからその重みに耐えかね、
塀際に植えられた木の枝先からぼとりぼとりと道路の上へ落ちるのです。
落ちた柿の実は、
時に自らその実を弾き、時にトラックの下敷きとなり、
アスファルトの上、周囲に悪臭を放つようになります。
落ちた柿の実の後始末に追われる娘たちを尻目に、
「とてもじゃないけど食べきれないなぁ」
「近所に配っても配っても配り切れないよぉ」
と、枝垂れるほどに実をつける柿を見上げながら
父は頬を紅潮させました。
昨春、外界(近所)と家とを取り持っていた母が逝き、
我が家が陸の孤島になることを懼れる父にとり、
その秋の柿の豊作はまさしく「蜘蛛の糸」だったのでしょう。
「ほら、柿採らなきゃ」
週に1度実家を訪ねる私を庭に駆り出しては、
梯子を立て木によじ登り、
父は夥しいまでに生り続ける柿の実に手を伸ばします。
「危ないから、もう下りてきなよ~」
娘の声が届いているのかいないのか、
2階までも届きそうな高さまで、
父は夢中で登り進めていってしまうのです。
風に揺れる枝先に震える指先を伸ばす父の姿に、
私は何度冷や汗を拭ったか知れません。
父は口下手です。
正確に言うと、父は、内弁慶です。
その父が袋いっぱいの柿の実を抱え
「食べきれないので良かったらどうぞ」
などと言いながら近所に配って歩く姿を思うと、
「柿の実なんか放っておきなよ」
とは言えませんでした。
柿の実のお陰かどうかは分かりません。
それでも、
「オカズ作り過ぎちゃったからどうぞ」とか
「ピザ焼いたのよ、お父さん食べるかしら」とか
母が居た時と変わらず、
近所の方々が庭を父のところを訪ねてくれるようになりました。
その実家の柿が、今年はまるで実をつけないのです。
それでも木の方だけは元気なのか、
この夏も柿の木を覆い尽くすように葉を茂らせました。
そしてこの季節、
舞い落ちる枯れ葉は瞬く間に道路を埋め尽くし、
腰を曲げたまま掃き掃除に追われる私は、
時に柿の木を恨めしげに見上げては、
彼らが丸裸になる日を今日か明日かと待ち侘びているのです。
この1年で、父の足腰も相当に弱りました。
この秋庭の柿の木がその実をつけても、
2階の高さまでよじ登る体力が、
父にはもはや残ってはいないのです。
この秋、柿の木がその実を結ばないのは、
父にとっても家族にとっても恐らく最良の結果だったのだ。
畳のヘリに足先を取られる父を見るにつけ、
そう思わずにはいられない最近の私なのです。
ちなみに……、

昨年これだけ実を結んだ柚子の木も、
今年は全くと言っていいほどの不作です。
その代りと言っては何ですが……、

レモンと、

蜜柑が、
少しばかり収穫できそうな今年の実家の庭です。
本日のたもつさんは、

私のヨーグルトを待っています、ブヒッ

先週の柿の木
薄曇りで見えにくいですが……。
写真の左上の方に2つ3つ実をつけていましたが、
実家の柿の木、今年はほとんどと言っていいほど収穫を望めそうもありません。
猛暑の影響なのでしょうか。
それとも、昨年の大豊作が影響して柿の木に栄養が足りていないとか……。
道路の掃き掃除をしていると、
見知らぬご老人と父が立ち話する声が聞こえてきました。
「葉っぱが落ちて大変ですねぇ」
「えぇ。今年は葉っぱが落ちるばかりで、実の方が全然なんですよ。
去年は本当によく実ったんですけどねぇ」
「柿は2年置きって言いますもんねぇ」
「あぁ、やっぱりそうですか。じゃあ、今年はダメですかねぇ。
去年は食べきれなくて、ご近所にも随分配ったんですよ」
昨年の秋、実家の柿の木はそれこそ狂ったように実をつけました。
金赤に染まった柿の実は瑞々しさからその重みに耐えかね、
塀際に植えられた木の枝先からぼとりぼとりと道路の上へ落ちるのです。
落ちた柿の実は、
時に自らその実を弾き、時にトラックの下敷きとなり、
アスファルトの上、周囲に悪臭を放つようになります。
落ちた柿の実の後始末に追われる娘たちを尻目に、
「とてもじゃないけど食べきれないなぁ」
「近所に配っても配っても配り切れないよぉ」
と、枝垂れるほどに実をつける柿を見上げながら
父は頬を紅潮させました。
昨春、外界(近所)と家とを取り持っていた母が逝き、
我が家が陸の孤島になることを懼れる父にとり、
その秋の柿の豊作はまさしく「蜘蛛の糸」だったのでしょう。
「ほら、柿採らなきゃ」
週に1度実家を訪ねる私を庭に駆り出しては、
梯子を立て木によじ登り、
父は夥しいまでに生り続ける柿の実に手を伸ばします。
「危ないから、もう下りてきなよ~」
娘の声が届いているのかいないのか、
2階までも届きそうな高さまで、
父は夢中で登り進めていってしまうのです。
風に揺れる枝先に震える指先を伸ばす父の姿に、
私は何度冷や汗を拭ったか知れません。
父は口下手です。
正確に言うと、父は、内弁慶です。
その父が袋いっぱいの柿の実を抱え
「食べきれないので良かったらどうぞ」
などと言いながら近所に配って歩く姿を思うと、
「柿の実なんか放っておきなよ」
とは言えませんでした。
柿の実のお陰かどうかは分かりません。
それでも、
「オカズ作り過ぎちゃったからどうぞ」とか
「ピザ焼いたのよ、お父さん食べるかしら」とか
母が居た時と変わらず、
近所の方々が庭を父のところを訪ねてくれるようになりました。
その実家の柿が、今年はまるで実をつけないのです。
それでも木の方だけは元気なのか、
この夏も柿の木を覆い尽くすように葉を茂らせました。
そしてこの季節、
舞い落ちる枯れ葉は瞬く間に道路を埋め尽くし、
腰を曲げたまま掃き掃除に追われる私は、
時に柿の木を恨めしげに見上げては、
彼らが丸裸になる日を今日か明日かと待ち侘びているのです。
この1年で、父の足腰も相当に弱りました。
この秋庭の柿の木がその実をつけても、
2階の高さまでよじ登る体力が、
父にはもはや残ってはいないのです。
この秋、柿の木がその実を結ばないのは、
父にとっても家族にとっても恐らく最良の結果だったのだ。
畳のヘリに足先を取られる父を見るにつけ、
そう思わずにはいられない最近の私なのです。
ちなみに……、

昨年これだけ実を結んだ柚子の木も、
今年は全くと言っていいほどの不作です。
その代りと言っては何ですが……、

レモンと、

蜜柑が、
少しばかり収穫できそうな今年の実家の庭です。
本日のたもつさんは、

私のヨーグルトを待っています、ブヒッ

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