彼の嗅覚

　彼は……実によく利く鼻をお持ちです　




　私が台所で忙しくしていると、


「今、豚肉焼いているでしょ？」と、晩のオカズを容易に嗅ぎ分けることができるし　


　数日前におろしたタオルと、


　今朝おろしたばかりのタオルを嗅ぎ分けることもできるんです、クンクン　　





　通常の人間の数倍とも言える嗅覚を誇る彼が、


「この部屋～、そろそろ臭うんですけど～」なんてクンクンし始める頃……、


　それが、たもつさんのシャンプー時でもある訳です、覚悟したまえよ　





　あっ、因みに“　彼　”っていうのはたもつのことじゃありません　




　私の“　夫　”のことでございます　





　だって、たもつさんの鼻……、














　枯れ野を嗅いで歩いたり、








　噎せ返るような新緑の香りを楽しんだり、








　時にはドライアイスの匂いを確認してみたりと……　




　嗅覚を鍛える訓練を、日夜積み重ねてきている筈なのですよ　




　それなのに……、



　たもつさんの嗅覚って、全く以ってお話にならないレベルなのです　　　





　時に、ワンコ友達とオヤツ交換なんかをしますよね　



　他の子たちは「食った食ったぁ～、さあ帰ろうぜっ　」って感じで、



　早々にその場を立ち去ろうとしているのですが……、



　貰ったオヤツを落としてしまったたもつさん、地べたを執拗に嗅いでいるくせに……　



　目と鼻の先に落ちているオヤツを、見付けることができないのです　



「たもつぅ、ほら、鼻使って　」　



　周囲の皆さんに励まされ（呆れられ……か）　



　鼻先を土で濡らしながら、匂いの強烈なオヤツをようやくゲット　





　いや何も……、







　サファイアさんみたいな、ジャーマンシェパードの如く、



　警察の鑑識で使われるような嗅覚を持てと言っている訳ではないのです　



　でもねぇ………………　






　おいら、ずば抜けた嗅覚なんて要らないよ　



　だってさ、



　日がな一日、こうしてゴロゴロ









　グダグダ








　……してたってさ、










　美味しいものは、いつでも易々ゲットできるからね～　



「確かに……仰る通りですけどね　」




　
　今度父ちゃんと、どっちの鼻がよく利くか“　嗅ぎ比べ　”でもしてみたら如何ですか？












　　　　　本日のトホホ　　　




　お散歩中、大好きなワンコ先輩の







　　　　↑　サファイア　　　　↑　ごん


　を連れてる母ちゃんとお嬢に遭遇したんです　



　暫く談笑した後……、



「さあ、たもつ帰るよ～　」



　と、お嬢にリードを持たれたたもつさん　





　なんの迷いもなく、一家の渦に呑み込まれ……　



　一切振り返ることなく、私を置き去りに去って行きました　　　




　　おかしいだろうがーっ　　　




　　　　　　も一つ、おまけ