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オムツを嗅ぐ女


  部屋の中にいつも、たもつの気配を感じています。

 (あー、ついに病んでしまったのね?)そう思ったアナタ。

           否―っ!

本当にね、たもつが家の中をウロウロしているんですよ今も。


   それはたもつを見送った日の晩のことです。

  これまで経験したことのない疲労感から

      その晩の眠りは深かったように思います。
 
    何時頃だったでしょうか?

        え? 今の何?

 それは、左半身を下に眠る私の右肩をポンっと叩く感触。

    夫の方を振り返ると、

 彼は私に背を向けかなり離れたところで横になっています。

      寝返りを打ってぶつかった訳じゃない。

  その感触はあまりにもハッキリと私の右肩に残っていました。

 それは手先……というか足先でポンっと叩くような感触。

    たもつが何か要求をする際私の太股をポンっと叩く、

         その感触そのものだったのです。

    「かーちゃん、おいらが寝る場所空けてちょーだい」

  そう訴えるたもつの姿が、見えたような気がしました。


   2日後、みなさんから頂いたたくさんの花々の中で

 白いカーネーションが1輪だけ揺れているのが目に留まりました。

       閉め切った窓、通り抜ける風もありません。

    あぁ、たくさん並んだアレンジメントとソファの隙間を

        たもつが今すり抜けて行ったんだ。


     また数日後のこと、車で出掛けた際、

 助手席に座る私の鼻をクンっと突く独特のニオイが。

     「ちょっ、オナラした?」夫をそう問い詰めると、

        「オレじゃない!」との返答。

    いやでも、今ハッキリと臭ったから。

  「あ! たもちゃん……、車に乗ってる?」
 
      訝しげに私を一瞥する夫。

  いやだって、本当に臭ったから。それもハッキリと。

     用事を済ませ車に乗り込むと……。

    ほら、やっぱりたもつが乗ってるじゃん。

  私が膝の上に抱えた鞄に、たもつの毛が2本。
  
そっか……。昔のように、助手席に座る私の膝の上に居たんだね。

   
   また別の日にはガーベラとグリーンが1本ずつ

       不自然な形で床に落ちていたことも。

 そっか、ベランダに出るのにお花がちょっと邪魔だったかな?


    そして迎えたたもつの誕生日。

  朝から私は口の中に妙な違和感を覚えていました。

       え? なんか……、腫れてる?

  おたふく風邪にでも罹ったように、

     私の右頬は少しだけ腫れていました。

 違和感があるのは右下顎周辺、

   たもつがメラノーマを患った部分とまるで同じ場所でした。

  たもちゃん、お口の中こんなに気持ち悪かったんだね。

    ううん。たぶん、こんなどころじゃなかったよね。

  ごめんね、たもちゃん。あんな怖い病気にさせてしまって。

    ごめんね、たもちゃん。

 歯も骨も失うことになってもの凄く戸惑ったし落胆もしたよね。

     いくら詫びても、たもつはもう戻りません。

   たもつをちゃんと育ててあげることができなかった。

自身を責めたところでそれも体裁を繕っているだけのように感じられ、

          更に自己嫌悪に陥ります。

  違和感のある場所に舌を這わせると、

     口内炎ができていると分かりました。

 ビタミン剤を飲むと、頬の腫れはその日の晩には引きました。


 

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       これ、たもつのオムツです。

  火葬場で脱がせたこのオムツは、

    たもつが息を引き取ってから穿かせたもの。

   それを今も大切にしている理由はただ1つ、

        私がニオイを嗅ぐ為……です。

 「吸水性も吸臭性も良いからもう何も匂わないでしょ?」
 
     呆れ気味に夫はそう言うけれど、

       否! ちゃんと匂うんですよ。

   このオレンジ色で囲った部分、

     ここ、僅かですがたもつのニオイが残っています。

  この部分に鼻を当て、たもつのニオイを嗅ぐのが至福の時。



      あぁ、やっぱり少し病んでいますかね。

   それでも私たちは……、

 愛する我が子を喪った私たちの気持ちに寄り添ってくれ

    励ましてくれ支えてくれる方々に本当に恵まれました。

   これもたもつが繋いでくれたご縁なんですよね。



     みなさんからたくさんの愛を戴きました。

  
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      たくさんのお花に囲まれ、

    たもつはとても幸せに感じてくれたと思います。




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    たくさんのオヤツは、旅立つ際に少し持たせ、

   残りは毎日少しずつたもつに供えています。



    その後も、数々の素敵なお花が届きました。



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  高度医療センターにお世話になったのは

   腫瘍が発覚してから半年ほどの間でしたが、

    こんなに可愛らしいお花を戴きました。



   それから、

 「たもこさんとたもちゃんそのものって気がして……」と

     贈ってくださったものが、


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     もうね、抱き締めて感涙。

 まだ乳臭さの抜けない幼いたもつを抱き上げた日のこと、

脚が立たなくなり気弱になったたもつを抱き締めた日々のこと、


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    様々な記憶が呼び起こされ、涙が溢れて止まりません。


    
  たもつが旅立ち夫は急遽2日間会社を休むことになりましたが、
 
     出社後は、夫の体調を気遣ってくださる方々、

   たもつの為に涙してくださる方々がいらしたようで、

      その優しさにもう胸がいっぱいになりました。


  「仕事から帰って花の香りがすると、

       まだたもつを感じることができる」
 
          夫はそう言います。

   みなさんから頂いたいっぱいの温もりや優しさに心癒され、

       私たちは1日1日を生きています。


  その歩みは遅いかもしれません。

 それでも、私たちはしっかりと前を向き歩いていくつもりです。

   たもつの記憶を「寂しい、哀しい」で埋めたくない。

  たもつと過ごした日々は何ものにも代えがたい

 「優しくて温かくて幸せいっぱいの愛おしい日々」なのですから。

  
  たもつのことを思い、また、描き始めようかなと思っています。

    みなさんのSNSにも、また、お邪魔させてくださいね。


   たもつの頑張りを見届けてくださったみなさまに、

         心より感謝申し上げます。




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プロフィール

たもこ

Author:たもこ
生後2ヵ月で我が家にやってきた柴犬たもつ。
日々進化を続けるたもつと彼に翻弄される犬素人夫婦の日常を綴ります。
旧名たもつ先生です。
たもつ ♂ 
2007年10月19日生まれ

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