どうしてうちの子が
相変わらず、たもつのデキモノの記録です。
ギョッとしてしまう記述もあるので、
「コワイの嫌い」という方はスルー願います。
たもつのデキモノをパッと見ただけで、
ガンセンター云々言い出したかかりつけの先生。
あ、言い方悪いですかね。
それでも、
(え? ちょっと見ただけで?
これといった検査もしていないのに?)
そう感じてしまったのも事実です。
ただ、「ガン」を口にすることに一切の躊躇いがなかったので、
(これ今、有無を言わせず現実を突き付けられてる最中なんだ)と、
やけに冷静に受け止めている自分もそこにはいました。
(良くて良性、悪ければ悪性。
何れにしろ『腫瘍』なんだな、これ……)
(いやいや、歯周病のヒドイのとか。そんなこと、ない?)
先生の見立て違いを願ったのは、
後にも先にもこの時だけです。
「腫瘍であれば、
メラノーマとか扁平上皮癌とか……ですかね」と先生。
(えっと……。それって「悪性腫瘍」ですよね?
良性の選択肢は一切なしですかっ?)
※ メラノーマには良性もあります。
「先生が見た感じでは、どうですか?」と訊いたところ、
「半々……ですかねぇ」との返事。
その「半々」が、メラノーマか扁平上皮癌かの半々なのか、
悪性か良性かの半々なのか、今となっては不明です。
私自身、何をどう訊けば本質に迫れるのか、
この時はまだ予備知識に乏しい状態でした。
ここで先生が畳みかけてきます。
「腫瘍であれば、この位置だと下顎ごと切除になるんですよね」
(え? 顎を取る?
たもつの顔が、無くなっちゃう?)←なくなりません。
(ちょっと、意味が分からない。
顔がなくなる? どういうこと?)←だから、顔はなくなりません。
たもつの顔がどうなってしまうのかという不安は勿論、
(これ、夫にどう伝えるのよ?)
私の脳内はそのシミュレーションに大忙しになっていました。
私はたもつのことを【超絶イケメン】だと思っています。
ハイ、親バカです。
(たもつの顔がどうにかなっちゃうだなんて。
受け入れられないよ……)←それよりも命が大事です。
それにしても……。
先生はどうしてまた「顎を切除する」などという恐ろし気な話、
躊躇いもなく口にしたのかなと、今でも不思議です。
いやだって、泣き崩れちゃう飼い主さんとか、
いると思うんですよね。
「キビシイ話をしても平気そう♪」
そう思われているってことなんですかねぇ(汗)
東大病院はもう放射線治療をやっていないとのことで、
以下の病院を提案されました。
・日獣大(武蔵境) 検査は平日のみ
・日大(藤沢) 検査は平日のみ
・麻布大(相模原) 検査は平日のみ
先生の恩師(ガンの権威)がいたが既に定年退職済
・がんセンター所沢 土日も検査可か?
先生曰く「(料金が)とにかく高い」
我が家は都内の東部エリアに位置しているので、
↑の何れの病院もとても遠方になります。
この段階での先生の診断は、
・肺の音は綺麗
・リンパに腫れは見られない
・デキモノにびらんは見られない
悪性だともっとグジャグジャになっている
・デキモノからの悪臭が(ほとんど)ない
メラノーマだと特に臭いがきつくなる
……ということでした。
先生からは「悲観的になり過ぎなくても……」との
言葉があったのですが、
これも先生の精一杯の気遣いだったのだと今は分かります。
前述したように、
坊主の口臭少し気になるなという思いはあったのですが、
(歳のせいだよね)と諦めている部分もありました。←これはダメ。
ただ、先生が診ても「患部の臭い」とは感じられなかったようで、
たもつの病気、辛うじて初期段階だったのかもしれません。
それでも話せば話すほど
「これは事を急いだ方が良いかも」と焦る自分もいました。
(取り敢えず、最もアクセスの良い日獣大を紹介してもらおうか)
つい前のめりになる自分を抑え、この日は一旦持ち帰ることに。
気付けば夫を置き去りにしてしまいそうになっていました。
病院からの帰り道、
(どうしてうちの子が。どうしてたもちゃんが……)と、
独り暗澹たる気持ちに。
何も知らない坊主は、
「いいからバギーから降ろしてよ!」と
頭から道路へ突っ込みそうな勢いです。
口の中にデキモノがあるとはいえ体調は至って良好、
この頃は寧ろ坊主を悩ませるのは痒みの方でした。
帰宅後はひたすらネット検索。
ずらりと並んだ口腔内腫瘍の画像とたもつのものとを比べては、
(これに似てる? いやいや、たもつのは色が違うし)
(良性ならこんな感じなんだね。たもつのは、これとも違うか)と、
目が潰れてしまうと思うほど延々画像を漁っていました。
(でも、良性の可能性、ゼロじゃないよね?)
(先生の誤診ってこと、ない? やっぱり歯周病とかさ)
口腔内腫瘍を検索してみると、
出てくるワードは不吉な未来を想像させるものばかりです。
溢れ出す涙を止める術も知らず、
腫れた瞼に視界を遮られ、
顔の形状も変わってしまったのではと思うほどでした。
耳洗浄と予想外に気温の上がった河原散歩で
すっかり疲れてしまったたもつは、
隣室で私に背を向け眠っていました。
その姿は、肩を震わせ嗚咽する私に、
敢えて背を向けているようにも見えました。


なんでもない河原散歩が、
こんなに愛おしいものだったなんて。
帰宅した夫に、病院でのことを報告。
「口の中にデキモノがあること」「(悪性)腫瘍の疑いがあること」
それから「良性の可能性もゼロではないらしい」
ついそう付け加えてしまったのは、
夫の反応を見るのが怖かったからだと思います。
そして、
「『良性腫瘍がポッと取れた』っていう事例も見付けたよ」と、
気休めにもならない話を披露してみせると、
夫の期待値は一気にそちらへと傾いていったように見えました。
それでも夫の表情は硬く、
家の中の空気は嘗て経験したことのないほどどんよりとしたものに。
私はヘドロの海へと飲み込まれ、
もう救いの手を差し伸べてくれる者はどこにもいないのだと、
そんな気持ちになっていました。
夫は「怒」や「哀」の感情をあまり出さないタイプですが、
この時は恐らくその両方の感情に揉みくちゃにされながら、
それを剥き出しにしないようにと藻掻いていたように思います。
「え、だって……。(たもつは)普通だよ」
「こんなに元気じゃん!」
敢えて呑気を装うその姿に安堵を覚えたのか、
たもつは夫を見上げ満面の笑みを返していました。
夫が現実と向き合うには、あと少し時間が必要だったのです。
この時点ではっきりしていたのは、
「かかりつけの病院でできることはない!」ということでした。
1つには、CT機器がないということ。
もう1つには、出血が多かった際対応可能な設備がないということ。
ならば、提案された病院の中から、
紹介して頂く病院を早急に選択しなければなりません。
これから何度通うのかも分からない、
夫も休みを頻繁に取れる訳ではないことを考えると、
電車にバギー乗車が可能になるかどうかの確認が必要でした。
※ JR東日本では、クレートに入れての乗車は勿論OK。
バギーでも全面を覆っていればOKという場合もあるようです。
……続きます。
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