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いい加減にしてほしい

 ご近所に、いつもやる気満々のワンコさんがいます。

  
  そのやる気が「元気いっぱいで良いじゃない」と

 好意的に捉えられるそれならば問題ないのですが……。

   実はその子、とにかくワンコというワンコを見るや

「ケンカ上等!」とばかりにあまり有り難くないやる気を漲らせ

   見境なくグイグイ迫ってきてしまうワンコさんなのです。

 
    身体は、たもつより一回り小さいくらい。

  犬種についてここでは伏せますが、

 一般的には「大人しい」「気が弱い」と認識され

      愛玩犬と言われる種類の子です。

  たもつより年下で元気真っ盛りというお年頃でしょうか。


   河原で初めて見掛けたのは数年前のこと。

     え? あの子、リードを付けてない?

   そこにはふわふわの毛を風になびかせ、

 足元も覚束ない様子で草の上を行く小さなワンコ。
    
      大丈夫? まだ赤ちゃんだよね。


次に見掛けた時も、その子はやはりノーリードで歩いていました。

    たもつが怖がることはないけれど、

  たもつがあの子を脅かしてしまう可能性はあるよね。

その頃たもつは、既に犬見知りをするようになっていました。
 
   初対面でむやみに急接近してくる子を受け入れる度量を

      たもつは持ち合わせてはいなかったのです。

    これは、接近される前に遠ざからねば!

      私はたもつを急かし、

 一刻も早くその子の視界から消えることだけを考えていました。

  ちょっと迷惑だなぁ、大人しそうな子ではあるけれど……。

     見ると、まだ躾も入っていないような幼い子です。

  呼び戻しはおろか、自身の名前すら分かっていないのでは?

       そう勘繰りたくなるほど、

 その子の耳に飼い主の声は届いていないように見えました。


     次に見掛けた時にもその子はノーリード。

  しつこく後ろを追われたたもつは、

 「ヴッ」と小さな声を上げささやかに抵抗してみせました。

その子はただ好奇心のままにたもつの後を追っているのであって、

     嫌がらせをする気など毛頭ないのです。

まだ幼く攻撃性など持ち合わせていないことも分かります。

    それでも私は、たもつとの相性も分からない

 ノーリードの子を受け入れるつもりは一切ありませんでした。

   飼い主は必死で呼び戻そうとしていますが、

 その子は聞く耳持たず、しつこくたもつに纏わりついてきます。



        「繋いでくださいっ!」



    堪らず、私はそう声を上げました。

 飼い主は「すいませんっ、すいませんっ」と繰り返すと、

  その子の尻を追いその場から消えて無くなろうと必死です。

     本当に困る! たもつが嫌がってるじゃん!






 それから数日後、更に困った事態が発生してしまいました。

    すっかり陽も落ちた河原、

 周囲に誰もいないことを確認し、腰を下ろしたたもつ。

      その直後のことです……。




         え???




    私たちの背後には、

  目を輝かせフラフラと歩み寄ってくる例のワンコ。



      ちょっと! おトイレ中なんですけど!




事態を把握したたもつはなんともやるせない表情を浮かべ、

    必死にウンチを絞り出しています。


      もー! 飼い主、いったいどこにいるのよ!


  辺りを見回すと、

 慌てた様子で走り寄ってくる飼い主の姿。

   そしてその飼い主が叫んでも叫んでも、

  その子は私たちの傍を離れようとはしません。


      
         「繋いでよっ!」



   前回より少しきつめに、私は飼い主に訴えました。

     「すいませんっ、すいませんっ」

  平謝りする飼い主は、

 大人しそうで控えめそう(に見える)私より小柄な女性。

   知ってる人は分かると思うけど、私は人相も良くないし

    態度もデカイし(←それは誉められるとこじゃないけど)

  事情を知らない人からしたら、

     私が苛めてるようにしか見えないじゃん!

    ホント、いい加減にしてほしい!




  
  その後暫くぶりに見掛けると、

その子はリードで繋がれるようになっていました。

   どこかでトラブルにでもなったのか……、

       その理由は分かりません。

 とにかく、私たちの散歩にも平穏が訪れました。

  飼い主が私を見てオドオドするのには閉口しましたが、

     そこには目を瞑ることにしました。




        ……長いですよ。




 それから数年後、一見気弱そうだったその子は、

   よそのワンコを見ては殺気立ってしまう

  やる気満々のワンコへと変貌を遂げていました。

   ワンコ同士の交流の作法を覚えるきっかけ、

それを飼い主が上手に作ってあげられなかったのかなと、

     勝手な想像ですがそう思ってしまいます。


 
   静かな河原、平和な散歩を楽しむ私たち、

その遠く後ろ、悲鳴にも似た「ヒーッ」という掠れ声と共に、

     その子が近付いてくるのが見えました。

    飼い主の手には伸縮リード。

そのリードを目一杯伸ばし飼い主を置き去りにするような形で、

     その子はグングン近づいてきています。

    飼い主が宥めるように声を掛けますが、

  興奮状態のその子は立ち止まるような素振りも見せず。


    だからぁ……。そこ、リードを縮めるところだよ!


   また怯えたような表情をされるのが嫌で、

     私はつい言葉を飲み込んでしまいます。



いつ遭遇してもその子は興奮が頂点に達しているような状態で、

  伸びきったリードではワンコの制御など可能な筈もありません。



   もう、いい加減にしてよっ!!!



  常軌を逸した叫び声を上げたのは、私ではありません。

 ワンコのそれより数段ヒステリックな声を上げた飼い主は、

   危険を察知し身を隠した私たちの方を一瞥すると、

  苛々の蒸気を頭のテッペンから噴き出しながら、

      闇の中へと消えていったのです。


    「いい加減にしてよ!」って……。

何がいけないのか、その子はちっとも分かってないじゃん。


   そのワンコさんのことが、

      少し気の毒になってしまいました。






   そしてこの夏、よその子が視界に入ると、

飼い主はリードをグッと引き付けて持つようになっていました。

  ワンコは相変わらず「ヒィッ」と小さな声を上げますが、

    こちらが危険を感じることは少なくなったように思います。

 見かねた誰かが、アドバイスしてくれたのかもしれません。

これで、あの子がヒステリックな声で詰られることも減るだろうし、

   たもつも周囲を警戒せず散歩を楽しむことができるだろう。


       ようやく河原に平穏が訪れました。














    昔の写真を見返していたら……。







     14-07-25-07.jpg


        坊主がこんなにデブちん。







   14-07-25-76_20180803145011432.jpg


       どーしてまた、そんなに太ってるのよ?











      14-07-25-109.jpg


    かーちゃん……。

     「デリカシー」って言葉、知ってる?





   ※ 写真は2014年7月のものです。











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プロフィール

たもこ

Author:たもこ
生後2ヵ月で我が家にやってきた柴犬たもつ。
日々進化を続けるたもつと彼に翻弄される犬素人夫婦の日常を綴ります。
旧名たもつ先生です。
たもつ ♂ 
2007年10月19日生まれ

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