ニラの天ぷら
郷里に帰ると……、
実家の両親から抱え切れないほどお土産を持たされること、
よくありますよね?
それが年に数回の帰省であれば尚のこと……と思います。
このところ立て続けに帰省している私ですが、
(「帰省」という言葉、新幹線やら飛行機やらを使っているイメージがあるので、使用するのもなにやらこっ恥ずかしい限りなのですが……)
ご多分に漏れず、実家に戻るとあれやこれやと土産を持たされる訳です。
実家に到着するや否や父の発する言葉は、
「今日は何時に帰るんだ?」
(あ、あの。今着いたばっかなんですけど……)
「う~ん。○時くらいかな~」
私の出発時間を確認するや否や、
柱時計で残り滞在時間を確認し、
慌ただしく茶箪笥やら冷蔵庫の中を捜索し始める父。
(だからさ~、今着いたばっかじゃん)
「これ、持って行くか?」
早速出てくるのは、ご近所からのお裾分けの菓子や乾物。
「そんなのいいからさ。ちょっと座りなよ」
(ちょっと、お茶くらい飲ませてくださいよ)
……と、ちょっと台所へ立った数分の間に、
父の姿は居間から消え、
(ちょっ、どこ行った?)
慌てて探し回ってみると、ジャングルと化した庭の片隅に父の姿を発見。
(あれれ~、随分小っちゃくなっちゃったねぇ)
そもそもが華奢な体つきだった父、
母が逝ってからは贅肉を蓄えることなど一切なく、
風が吹けば飛ばされそうなその身体は、
周囲の枝葉に隠れてしまいそうです。
(あ~あ、もはや私より軽いかもね~)
足腰が弱ってきた父が、こうして庭に出るのには理由があります。
帰省した娘に持たせる為にと、
庭での実りを収穫しなければならない使命に、
燃えているからなのです。
数週間前も、
「フキ、持って行く?」
「う~ん。○○(←姉のことです)が煮たやつならね~」
「なんだぁ、自分で煮ないのかぁ?」
「だって、○○が煮たのが美味しいじゃん」
「そうだよなぁ」
……ということで、姉が似たフキを易々入手。

先週も、
「タラの芽、持って行く? タラの芽の天ぷら、美味いぞぉ」
「だって、天ぷらなんかやらないも~ん。面倒臭いし……」
「なんだお前、天ぷらもやらないのか?」
二人暮らしの我が家、天ぷらは外で食べるものと決めています。
「天ぷらは作るの大変だからいいよ」
という夫の優しい言葉を真に受け、
結婚以来一度も天ぷらを作っていない私。
「天ぷらなんかやらないも~ん、面倒臭いし……」
という自堕落な娘の言葉に衝撃でも受けたのか、
或いは、天ぷらも揚げられない娘を不憫にでも思ったのか、
実のところは分かりません。
……ですが、
先日の父の土産は天ぷら。
買い物から戻った私は、
台所で白い粉をまき散らし、なにやら独り格闘している父を発見。
「それ、なぁに?」
「ん? 天ぷらだよ」
「え? なに揚げるの?」
「ニラだよ」
???????????????
「ニラ?」
「ニラだよ」
そう言えば、その日の午前中……、
「ニラ、持って行くか?」
「え? ニラ?」
「うん、ニラ」
見遣ると、父の手にはなにやら見慣れぬ草の束が。
「え? それ、ニラ?」
「ニラだよ」
「ニラじゃあないよね?」
「ニラだよ」
(いやいや。どう見てもニラじゃないっしょ?)
「豚肉と炒めればいいんじゃないか? 持って行くか?」
(……あ、あはは)
そこで、会話は自然消滅。
その、ニラ……ではない草で、天ぷらを作ろうと躍起になっている父。
(こ、これは危険すぎるーっ)
「あのさ。天ぷらは後にして、お昼ご飯食べない?」
「いいよ。じゃあ、後にするから」
(後にも先にも、揚げなくていいから)
結局、父は『ニラ』と信じて疑わない『草』で、
『ニラの天ぷら』を作りました。
「半分持って行けば?」
「あ……。じゃあ、半分貰って行くね」
かくして父に持たされた『ニラ』の天ぷらがこちらです。

※ しつこいようだけど、『ニラ』ではありません。
帰りの電車の中、姉にこのことをメールで伝えると、
「あれは(勿論)ニラじゃないよ。ニンニクの芽です」
との回答が。
(あ、ただの『草』でもなかったんだ……)
(どう見ても雑草でしょ? 雑草だよねーっ!?)
老齢の父のすることに不信感を抱かずにはいられなかった、
自身の未熟さ愚かさを深く反省。
あ、ご心配には及びません。
実家に帰れば勿論、
至極真っ当なお土産を姉が忘れずに準備しておいてくれています。

梅ジャムです
庭の梅の実がほとんど落ちてしまうと聞いていましたが、
しっかりジャムを煮込んでくれてありました。
おまけ

庭のバラです
うちの庭、結構色んなものが出てくる……と感心。
これ、一年以上も前のことですが……、
既に余命を告知されていた母が、
私にだけこっそり話してくれたことがあったんです。
「私がいなくなっちゃったら、
誰が○○(←私のことです)に持たせるお土産の心配してくれるのかなぁ」
そんな母に、
今ならちゃんと答えてあげることができます。
「大丈夫だよ。
今でも抱え切れないくらい、お土産貰って帰ってるから」
実家の両親から抱え切れないほどお土産を持たされること、
よくありますよね?
それが年に数回の帰省であれば尚のこと……と思います。
このところ立て続けに帰省している私ですが、
(「帰省」という言葉、新幹線やら飛行機やらを使っているイメージがあるので、使用するのもなにやらこっ恥ずかしい限りなのですが……)
ご多分に漏れず、実家に戻るとあれやこれやと土産を持たされる訳です。
実家に到着するや否や父の発する言葉は、
「今日は何時に帰るんだ?」
(あ、あの。今着いたばっかなんですけど……)
「う~ん。○時くらいかな~」
私の出発時間を確認するや否や、
柱時計で残り滞在時間を確認し、
慌ただしく茶箪笥やら冷蔵庫の中を捜索し始める父。
(だからさ~、今着いたばっかじゃん)
「これ、持って行くか?」
早速出てくるのは、ご近所からのお裾分けの菓子や乾物。
「そんなのいいからさ。ちょっと座りなよ」
(ちょっと、お茶くらい飲ませてくださいよ)
……と、ちょっと台所へ立った数分の間に、
父の姿は居間から消え、
(ちょっ、どこ行った?)
慌てて探し回ってみると、ジャングルと化した庭の片隅に父の姿を発見。
(あれれ~、随分小っちゃくなっちゃったねぇ)
そもそもが華奢な体つきだった父、
母が逝ってからは贅肉を蓄えることなど一切なく、
風が吹けば飛ばされそうなその身体は、
周囲の枝葉に隠れてしまいそうです。
(あ~あ、もはや私より軽いかもね~)
足腰が弱ってきた父が、こうして庭に出るのには理由があります。
帰省した娘に持たせる為にと、
庭での実りを収穫しなければならない使命に、
燃えているからなのです。
数週間前も、
「フキ、持って行く?」
「う~ん。○○(←姉のことです)が煮たやつならね~」
「なんだぁ、自分で煮ないのかぁ?」
「だって、○○が煮たのが美味しいじゃん」
「そうだよなぁ」
……ということで、姉が似たフキを易々入手。

先週も、
「タラの芽、持って行く? タラの芽の天ぷら、美味いぞぉ」
「だって、天ぷらなんかやらないも~ん。面倒臭いし……」
「なんだお前、天ぷらもやらないのか?」
二人暮らしの我が家、天ぷらは外で食べるものと決めています。
「天ぷらは作るの大変だからいいよ」
という夫の優しい言葉を真に受け、
結婚以来一度も天ぷらを作っていない私。
「天ぷらなんかやらないも~ん、面倒臭いし……」
という自堕落な娘の言葉に衝撃でも受けたのか、
或いは、天ぷらも揚げられない娘を不憫にでも思ったのか、
実のところは分かりません。
……ですが、
先日の父の土産は天ぷら。
買い物から戻った私は、
台所で白い粉をまき散らし、なにやら独り格闘している父を発見。
「それ、なぁに?」
「ん? 天ぷらだよ」
「え? なに揚げるの?」
「ニラだよ」
???????????????
「ニラ?」
「ニラだよ」
そう言えば、その日の午前中……、
「ニラ、持って行くか?」
「え? ニラ?」
「うん、ニラ」
見遣ると、父の手にはなにやら見慣れぬ草の束が。
「え? それ、ニラ?」
「ニラだよ」
「ニラじゃあないよね?」
「ニラだよ」
(いやいや。どう見てもニラじゃないっしょ?)
「豚肉と炒めればいいんじゃないか? 持って行くか?」
(……あ、あはは)
そこで、会話は自然消滅。
その、ニラ……ではない草で、天ぷらを作ろうと躍起になっている父。
(こ、これは危険すぎるーっ)
「あのさ。天ぷらは後にして、お昼ご飯食べない?」
「いいよ。じゃあ、後にするから」
(後にも先にも、揚げなくていいから)
結局、父は『ニラ』と信じて疑わない『草』で、
『ニラの天ぷら』を作りました。
「半分持って行けば?」
「あ……。じゃあ、半分貰って行くね」
かくして父に持たされた『ニラ』の天ぷらがこちらです。

※ しつこいようだけど、『ニラ』ではありません。
帰りの電車の中、姉にこのことをメールで伝えると、
「あれは(勿論)ニラじゃないよ。ニンニクの芽です」
との回答が。
(あ、ただの『草』でもなかったんだ……)
(どう見ても雑草でしょ? 雑草だよねーっ!?)
老齢の父のすることに不信感を抱かずにはいられなかった、
自身の未熟さ愚かさを深く反省。
あ、ご心配には及びません。
実家に帰れば勿論、
至極真っ当なお土産を姉が忘れずに準備しておいてくれています。

梅ジャムです
庭の梅の実がほとんど落ちてしまうと聞いていましたが、
しっかりジャムを煮込んでくれてありました。
おまけ

庭のバラです
うちの庭、結構色んなものが出てくる……と感心。
これ、一年以上も前のことですが……、
既に余命を告知されていた母が、
私にだけこっそり話してくれたことがあったんです。
「私がいなくなっちゃったら、
誰が○○(←私のことです)に持たせるお土産の心配してくれるのかなぁ」
そんな母に、
今ならちゃんと答えてあげることができます。
「大丈夫だよ。
今でも抱え切れないくらい、お土産貰って帰ってるから」
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