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往復ビンタ

 
                



ごらぁ

往復ビンタお見舞いされたいんかぁあぁ







 ……、のっけからすみませんっ 





 うちの坊主が、


 性懲りもなく、また拾い食いしそうになったものですから…… 




「愚図ってないで、こっちに来なさーいっ 



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「その先になんか落ちてるの、母ちゃん知ってるからねーっ 





 おいら、拾い食いする気なんてサラサラないもんねーだ 



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「 なっ   人を小馬鹿にした態度  」



「 拾い食いとか、許さないからねっ  」



「 これっ、ちょっと聞いてるのぉ  」






11-12-12-29朝霧




      あ~あ、ウルサイにゃー、もー 





「 だーかーらー、


往復ビンタが欲しいのかって訊いてるんじゃ 








「往路」だけでは飽き足らず「復路」までもビンタをお見舞いする「往復ビンタ」って……  


 かなり過激な技であることに間違いはありません。






 昔、事あるごとに「往復ビンタ」を繰り出す教師がいました。



 小学4年生の時の私の担任です。



 当時、10歳の児童たちからすれば教師という立場は絶対的権力の象徴。



 教壇に立って数年の彼女は教師としての経験も浅かった筈ですが、



 「ビンタ」一つで子供たちを黙らせてしまうのですから、



 その威力の凄まじさたるや……想像に難くありません。



 

 ビンタ(平手打ち) を辞書で引いてみると……。



 各種格闘技において打撃技(殴打技)としてよく使用される。
 
 パンチに比べると拳を痛める心配が少なくダメージが大きくない、

 あるいは大きくしないことが可能な殴打技であることから、

 教育的、訓導的な意味で使われることもある。

 しかし威力がパンチに劣るとは限らず、

 相手を失神させたり相手の耳の鼓膜を破裂させることもある。




 これは 


 悍ましいまでにパワーを秘めた歴とした体罰ではありませんか 


 
 
 今の時代では考え難いかもしれませんが、


 当時は当たり前のように「ビンタ」という処罰が横行していました。




 規則を破った者が名乗り出なければ全体責任で全員ビンタ。


 イジメがあればイジメた者もイジメを看過した者もとにかく全体責任で全員ビンタ。


 

「叩かれているみんなより、叩いてる先生の方が痛いのよ」


「先生、心で泣きながら叩いているんだから」



 ……なんていう教師の声も、



 ウソウソ、叩かれる方が痛いに決まってるじゃん、



 なんて、少しも心に響かなかったあの頃。







 それでもこの歳になってようやく、



 自分より非力な者に手を挙げるその痛みを、



 私も知ることとなりました。






 もう、1年以上も前のことになります。



 その日、いつも以上に駄々を捏ねてみせるたもつの態度に苛立ちを覚えた私は、



 彼のその鼻っ面を手加減なしに平手打ちしてしまったのです。




 ピシャッという鈍い音が響いた後は、



 張り詰めた空気が瞬時に部屋中を覆うのが分かりました。


 
 夫が表情を曇らせるのを目の端で捉えながら、



 私は尚も厳しい視線をたもつから逸らそうとはしませんでした。



 たもつは一瞬何が起こったのか分からないような表情を見せ、



 それから叩かれた鼻先を前足で頻りに拭い始めました。




 余りにもたどたどしいその仕草が、



 幸いなことに、私を一瞬で元の自分へと引き戻してくれたのです。





 
 考えてみればその日……、


 たもつはいつになく言う事を聞こうとせず、


 私はいつになく自らの感情を制御することが難しかったのです。




 その2日前、私は母からその病名と余命とを告げられていました。


 抑えようのない戸惑いや苛立ちを、


 私は抵抗する術を持たない幼いたもつにぶつけてみせたのでした。





 それが明らかに過ぎた体罰であったことは、


 誰よりたもつ本人が分かっていたのかもしれません。





 いつもなら更なる大暴れで抵抗してみせる筈のたもつが、


 その日に限りピタリと動きを止めたばかりでなく、


 ジッと下を向いたまま身体を硬直させているのです。


 
 その後は私の方を一切見遣ることもなく、


 たもつは静かに隣の部屋へと姿を消しました。






 大きな音を立て何かが崩れ落ちるのが分かりました。


 それが、それまで築いてきた信頼関係や積み上げた愛情だったのは言うまでもありません。


 
 私は大いに嘆きました。




 あれは、教育的指導でもなんでもない。


 個人的な感情を、力を持たない彼にぶつけただけのことなのだ。




 無言のまま部屋を去ったたもつの後を追うと、


 彼を抱き締め、


 私は涙ながらにただ只管謝罪の言葉を口にしていました。




 たもつは暫く身を硬くしていましたが、


 鬱陶しそうに私の腕の中から抜け出ると、


 近くにあったぬいぐるみを咥え私の方へと放りました。





 いいから遊ぼうよぉ 




 ビンタのことなど気にも留めていなかったのか、


 乱れた気持ちを彼にぶつけた私のことを寛容に受け止めてくれたのか、


 彼の心持ちを窺い知ることは勿論できませんでした。





 それでも、


 もう2度と、


 私が彼にビンタを喰らわせることはないでしょう。




 あの時の手の痛み、


 あれだけはいつになっても消えそうにないのですから。





 
 



S08-01-19_1025.jpg  顔は止めてね











      お・ま・け     





 たもつさんの寝姿を大公開 




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プロフィール

たもこ

Author:たもこ
生後2ヵ月で我が家にやってきた柴犬たもつ。
日々進化を続けるたもつと彼に翻弄される犬素人夫婦の日常を綴ります。
旧名たもつ先生です。
たもつ ♂ 
2007年10月19日生まれ

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