サーフィン行かないで！

　一昨年くらいから、夫がサーフィンに出掛けるようになりました　

　とはいえ初心者のやること、準備にも時間が掛かる訳で　

　……で、ばれちゃうんですよね、たもつさんに　





　ん　　　なにやら怪しい動き　

　二人でこそこそ、何かおいらに隠し事しちゃあいませんか？







「ち、近いです　」




　　
　実は……問題は積み込み作業の時でして　




　たもつさん、とにかくよく鳴く、もとい泣く　　のです　




　最初は、サーフボードを抱えた夫の周りをウロウロ　

　……で、ボードを抱えた夫に続き、他の荷物を抱えた私が玄関を出ようものなら……。





　閉ざされた扉の向こうから聞こえてくる、なんとも悲痛なたもつさんの叫び声。


「ギャオーン　」

「グァオーン　」

　それは次第に「クーン」という切ない声色に変わり、最後には「ふ～ん」という溜め息にも似た諦め声に。

　

　いったいどうしてなんでしょう、たもつさん？



「たもちゃん。まあ機嫌でも直して、こっちでお茶でもしませんか？　」







　知～らね　









　おいらを置いていくなんて、本当に信じられにゃいよぉ　








　暫くして、少しばかり気を取り直したたもつさん　







　父ちゃん、ボチボチ帰ってくるかな～　


「あ、の。まだ、海に到着すらしてないような……　」










　でもでも……



「いい波きてるみたいだから、ちょっと行ってくるね　」



　ん？　どうぞご勝手に








　いつかはそんなふうに、クールにお見送りしてくれる日がくるのでしょうか……ねえ、たもつさん？