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君は何処へ行くのか

      警察庁は、

 去年1年間に認知症またはその疑いで行方不明になったとして

   警察に届けられた人がのべ1万322人に上り、

 統計を取り始めたおととしより715人増えたと、

             今月(6月)5日に発表しました。

   こうしたなかで今注目されているのが、

 衛星の電波を使って位置を特定するGPSの技術です。

                  NHK NEWS WEB より


 最近、特に問題になっていますよね、高齢者の行方不明。

    これ、我が家も決して他人事とは言っていられないんです。

      実は実家の父も以前、

「行方不明者リスト入り」になりかねない事態に陥ったことがあるんです。

      以下、本人談です。

  「俺、この前迷子になっちゃったんだ~(笑)」

     え? 迷子? ……っていうか、「この前」っていつよ?

    唐突に父が語り出したのは、

      母が逝って数ヶ月が過ぎた頃のことです。

今となっては、もう3年ほども前のことになりますが。

  「モノレール降りてさぁ。
     
      あれ、間違った方に降りちゃったんだよなぁ」

    モノレール? どこかにお出掛けした時の話ですか?

  母同伴でなければ何処にも出ようとしなかった父のこと、

    いったいいつの体験談を語りだしたのやら、

        どうも話が見えてきません。

   「モノレール降りてさぁ。

     うちの方と反対側に出ちゃったんだよなぁ」

      モノレールの最寄り駅、改札口は1ヶ所、

 そこを出て左を向くか右を向くかで、その景色は大きく変ります。

左へ出るとそこは学校のグランドなどが広がる比較的開けた空間。

  右へ出るとそこは大きな商業施設が空を遮り、

         多少の圧迫感を覚える空間になっています。

   この商業施設を通り抜け信号を1つ渡りさえすれば、

                  間もなく実家に到着です。

    駅を出てから早ければ5分、

 高齢者の脚でも10分前後あれば足りるでしょう。

     父はその道を、

  「あれ、3時間くらい掛かっちゃったんだよなぁ~」

          ……などと言って、笑います。

 「改札出て、左に行っちゃったのがいけなかったんだろ?」

             そうですね。

   「あそこに、交番あるだろ?」
   
      ちゃんと分かってるじゃないですか。

 「それからどんどん歩いてたら、魚屋が出てきてさぁ」

        ここ、以前より利用している魚屋さんです。

「……で、そこから真っ直ぐ来れば良かったんだよなぁ」

   仰る通り、その魚屋沿いの道を真っ直ぐ来れば、

    角を2回曲がるだけで自宅が見えてきた筈なんですけどね。

 「そこから、中学校の向こうのグランドの方まで行っちゃってさぁ」

     は? はぁ? まるっきり方角がおかしくなってるし。

しかもこれ、ものすご~く遠い道のりですよ。

  「いつもウォーキングしてたからさ、俺、良く分かってるだろ?」

 ……てか、良く分かってないから迷子になってるんでしょうが。

   母は生前、出不精の父を半ば強引に連れ出し、

     ウォーキングで足腰鍛えるよう促していたんですよね。

 『歩けなくなったらお終いだよ。子供に迷惑掛けたくないでしょ!』

     そう言って、母はいつも父に発破をかけていましたね。

   「あそこのグランドとかいつも一緒に歩いてたもん。

       それにしても、よく歩かされたよなぁ」

     それだけ通ってて、なぜ真っ直ぐ帰って来られない?

 「あそこからが……。また間違っちゃったんだよな~」

    その大きなグランドからは、方向さえ間違えなければ

   これまた角を1回曲るだけで自宅に辿り着くことができます。

  「向かってきた方向は、これ、合ってるだろ?」

     うんうん、間違ってはいませんね。

   「でもさ、あれ、行き過ぎちゃったってことだよな?」

      うんうん、そういうことですね。

  聞いたところ、向かった方角に間違いはなかったんですよね。

     ただ、ほんの少し、ほんの少しだけ惜しかった。

   あぁ、そこで左に曲れば良かったんじゃない?

      ほら、そこでちょっぴり行き過ぎてるじゃん。

  そこでほんのちょっと戻らなきゃ……みたいな感じで。

     まるで懲りていないのか、

       父は誇らしげな表情で更に続けます。

   「ほら、あの飯屋があったからさ、分かったんだ」

     飯屋?

     父の言うその食堂は……、

私たちがその街に越してきた数十年前には既にその場所に建ち、

    街外れで人なんか来ないんじゃない?

   なんて噂する私たちの評価を他所に営業を続け、

果たして今でも暖簾を提げているのかどうかは分かりませんが、

     今でも変わらずその場所に建ち、

 父に「今居る場所」を教え、父を自宅へと導いたのでした。

   「俺の記憶力は確かだもん。
 
          あの店、ずっと前からあったもんな?」

いやいや、記憶力が怪しいからこういう事になってるんでしょうが。
 
  高齢になると、やはり昔の記憶がものを言うのでしょうか。

   その古びた食堂が父の視界に飛び込んで来なければ、

父は恐らく何方かのお世話になっていたか、

    或いは「行方不明者リスト」に名を列ねることに

            なっていたやもしれません。

     父の話に耳を傾けていると、

  え? そこまで分かっていたのに?

     そんな些細な変化にも気付いていたのに?

……と、迷子騒動自体に疑問を感じることも多いです。

     いったいなぜそこで迷う?……というのが、

今のところ迷うことのない私には理解の及ばないところなんですよね。

    この3時間にも及ぶ大冒険を、

  父は高座にでも上がったかのように如何にも調子よく

カラカラ笑い声を立てながら話して聞かせてくれるのですが、

   調子を合わせてウンウン頷く私の脳内には

        「認知症」の文字が浮かんでは消え、

  乾いた笑い声を飛ばす口の中はすっかり渇き切ったままに、

    脱力する身体を引き摺るように家路に着いたことを、

      今でも時たま思い出してしまうのです。


   その後の父が余所行きを羽織る機会と言えば、

家族揃っての墓参りか、姉が連れ添っての美術鑑賞かという程度で、

   独り駅に降り立つという危険を冒すこともなくなっていたので、

     「あそこで左に曲がりさえすれば」

 ……なんてことを悔やむ必要もないままに今日を迎えている訳で。

    高齢者が帰宅できなくなる事例、
 
             決して他人事などではありません。

本当に「いつもの通り」「いつもの風景」の中でそれは起こり得るもので、

    まさかうちの家族が……という油断は禁物なんですよね。


  ニュースで言われるように、GPS技術も勿論有効でしょう。

     でもその前に、 

  行方不明者情報を警察や自治体で共有できるように、

   なにせ老若男女これだけネットで繋がっている時代ですからね、

           是非ともお願いしたいものですよね。

   突如行方知れずになった親御さんを何年も探し続けている方や、

帰りの道も分からず見知らぬ土地で家族の迎えを待ち続けるお年寄りが、

   一日も早く元の生活に戻れるよう祈らずにはいられません。




    ワンコには帰巣本能があると言いますが……。



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                おいらのうちは……、




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                   どっちだっけ?


 いざという時、この子は帰って来られるだろうか……。

      

  

    帰巣本能とは関係ないですけどね。


    たもちゃ~ん、そこで何やってんのぉ~?


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               あ!




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        モジモジしてる。

           前足丸まってるから分かるんですよ。





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            真剣な横顔。




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               真剣過ぎる横顔。






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                布団の隙間からスナギモ……。



               だから、止めろってーっ!




炒飯は米でできている

    退屈な内容なのでスルーしてくださいませ 


  このところ益々周囲を悩ませているのが、

             実家の父の言動の数々。

    簡単なことが理解できなかったり、

  数分前の出来事を覚えていられなかったり、

     それはもう予想もできないことの連続で、

   私たちはただ翻弄されるばかりの日々を送っています。


   先日実家を訪ねた際も……。

    食への関心の低い父に

  どうにか食事を摂ってもらおうとした私。

私 「お昼、何なら食べられそう?」

父 「なんでも食えるよ~」

  如何にも適当な返答。

   食べる気無しなのが仄かに伝わってきますよ。

私 「じゃあ、炒飯とラーメン、どっちがいい?」

父 「………………」

  僅かに首を傾げ、暫し視線を宙に泳がせる父。

 たかだか昼飯ですよ、そこまで検討重ねることですかね?

父 「炒飯はあれ、……米、だよな?」

私 「そ、そーだけど」

父 「じゃあ、ラーメンかなぁ」

  炒飯かラーメンかの選択を迷ってたんじゃなくて、

   炒飯が何でできてるか、思考を巡らせていたのですか?

  炒飯が何たるかを、すぐに連想できなかった模様。


 父も、そして周囲も、混乱することが増えてきました。


   そして、こんな日もあります。

父 「ほらぁ、もう昼だぞ~」

私 「え? まだ11時半じゃん」

父 「昼だよぉ、昼飯食わなくちゃ」

    並外れて食の細い父、

  昼飯の心配をするなど、

   以前には考えられないことだったんですけどね。


父 「出前でも取れよ」

私 「え? 食べたいものでもあるの?」

父 「………………、寿司……だろ?」

  父は、寿司を希望している訳ではありません。

   出前といって思う浮かぶものが寿司だっただけ、

    他に選択肢がなかったんですよね。

私 「寿司? 本当にお寿司を食べたいの?」

   迷いながら頷く父。

父 「……うん」

私 「じゃあ、買い物ついでに買ってこようか?」

父 「……それでもいいけど」

  本当に寿司なんか食べる気あるんですかね?

 このところ「米が喉を通らない」と訴えることの多い父、

   食欲がない日など1貫2貫摘めればいいところなのです。

  ……にしても、却下するのも可哀相だし。

私 「じゃあ……、外で買ってくるね」

父 「あぁ」

  掃除機を手放し上着を羽織り……、

      慌てて出掛ける準備をしていると、

    別室から再び響く父の声。

父 「おーい、昼だぞ~」

私 「え? えっ?」

 慌てて声の出元を辿ると、

  そこには冷蔵庫に頭を突っ込み食料を物色する父の姿が。

父 「もう昼だぞぉ。俺、ラーメンかなんかでいいからさぁ」

  ……って、さっき「寿司」って言ってませんでしたっけ?

私 「……へ? 今、お昼買いに出ようと思ってたんだけど」

父 「買いに?」

私 「え、だって……。『買ってくるね』ってさっき話したじゃん」

父 「……? それなら、それでもいいけど」

  そして、再び財布を手にし玄関へ向かう私に父が発したひと言。

父 「なんだぁ、どこか行くのか? 昼だぞ?」

    え? えーっ!?

私 「だからぁ……、『買ってくる』ってことになったでしょ?」

  ……っつーか、いったいどーすりゃいいんですかっ!?


  私の苛立ちを、父は敏感に感じ取っていたのでしょう。


父 「…………。

  すぐに忘れちゃうんだよ! 覚えてられないんだ! 

   また忘れちゃう前に(さっさと)行ってきちゃえよ!」

  父もまた、少し苛立っているように見えました。

    決して私の言動に苛立っている訳ではありません。

   まるで要領を得ない自分自身の言動に、

  戸惑いそして苛立ちを抑えきれずにいるようでした。

私 「待ってられる? 待ってられるなら、買ってきちゃうけど」

父 「うん」

  一連のやり取りを、父は恐らく覚えてはいません。

    全て、ほんの数分の間の出来事なんですけどね。

 今さっき耳にした「買い物に行く」という私の台詞も、

父の記憶にどれほどの間留まり続けてくれるのか怪しいものです。

  
    結局その日の昼食は、

 父が出前でと言った寿司でも、作ってくれと言ったラーメンでもなく、

   スーパーの惣菜コーナーに並ぶ焼きそばになりました。

    それでも、父が不平を口にすることはありません。

 寿司のこともラーメンのことも既に父の記憶の中にはないからです。


 「言った」「言わない」で始まる諍い、

 母の存命中から目の当たりにしてきたことではあるんです。

  まあ、諍いという水準まで発展することは稀でしたけどね。

 なぜって、父が激高する以前に口を噤むことを、

   家族はみな自然と覚えてしまっていましたから。


ただ、医療もそして介護の知識もない私にも言えることは、

 以前の「言った」「言わない」と今現在の父のそれとは、

      明らかに違うということです。



   「進んできた、かな」

     「……だよね」

 姉と時折交わす、父の症状の悪化についての会話です。

   昨年辺りまでは、緩やかだったんですよね、症状の進行。

 それがここへ来て、

   姉も私もとにかく驚かされることばかりなのです。

     先日などは、

 同居の姉に向かい「お前、名前なんだっけ?」と問うたとか……。

   炒飯が何でできていようが訊かれれば何度でも答えるし、

炒飯が何ができているかなど知らずともさして支障はないでしょう。

 それでも進行を遅らせる必要性に迫られているのは厳然たる事実で、

     父をどう医療機関へ誘おうかと、

   姉と二人知恵を巡らせている只中なのでありました。 








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         実家の4月の庭です。




   

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     母が様々植えていたので、

   思わぬところから思わぬ花が顔を覗かせます。





   
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         これは、河原のカワヅザクラの実。


  実をつけていたことは最近知りました。

   ワンコ友達によると

「サトウニシキも植えてあるよねぇ、あれも生るのかなぁ 

       ということなので……。

   サトウニシキが実を結んでいるか、

     誰よりも先に確認しに行かねばっ 

   ちなみにカワヅザクラの実、

  毒にはならないが美味しくはないのだそうです。






     それからオマケ。




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         ベランダで行き倒れた犬。








誤変換ですよ

   週末、実家で高校野球を観ていた時のことです。

    幼かったあの日、

こうして家族揃って野球を観ていた時のことを思い出していた私は、

            ふと呟きました。


 「子供の頃さ、

   『アンパイア』のこと『アンパン屋』だと思ってたんだよね~」

父「ん?」

姉「へ!?」


       ………………暫しの静寂。



私「え? 思わなかった?」

二人「…………」

私「……てか、子供の頃『アンパイア』なんて言葉知らないじゃん」

二人「…………」

私「思わなかった? 

    なんで野球場に『アンパン屋』がいるんだろ?って」

姉「はぁ?」

私「え? だからさ……。

   あぁ、あの人(審判)アンパン屋さんなんだろうな~って思ってたんだよね。

  本業はアンパン屋さん。……で、野球の時は審判。

   なんて言うか、その、『アンパン屋』っていうのは屋号って言うか……。

  あぁ、あの審判の家、老舗の『アンパン屋』なんだろうなぁって」

姉「へぇ?」

私「え? え? 思わなかった?」

姉「……思わないよ」

父(涙を流しながら、飯粒食べ零しながら、爆笑)

私「……てか、思うでしょ?

 ほら『台風一過』を『台風の一家』だと思ってた……みたいな」

姉「ははぁ~ん」


   実際、よくありますよね、こういった誤った変換。

  「台風一家」☓  「台風一過」○    

 「うさぎ美味しかの山」☓  「うさぎ追いしかの山」○

   「孫にも衣装」☓   「馬子にも衣装」○

「バルブが弾ける」☓ 「バブルが弾ける」○ (← 知人の話) 


  まあ、ちょっとした思い違いなら一時恥を掻くだけ、

                笑い話で済みますけどね。

   このところの私の周辺、

ちょっとした思い違いが、ちょっとも笑えない状況を引き起こす件が、

        多々発生しています。

  思い違いが多いのは、実家の父です。

 父も齢八十、忘れっぽくなったことも思い違いが多くなったことも、

    至極当たり前のことだと受け止めてはいます。

 ただ父自身「あれれ? そうだったっけ~?」と、

     軽い気持ちで思い違いを認めることができない。

  私「○○って、言ったじゃん」

      父「……言わないよ」

  その応酬で済ませられる程度の案件ならば、寧ろ安泰です。

父曰く「今日こっちに来るって言ったじゃないかっ!」

  (言ってないけどね~。

     ……てか、こりゃ急遽出向かないとマズイ事態ですかね)


父曰く「酒買ってきてって頼んだのに!」

 (頼んでないけどね~。

 ……てか、酒なんか呷ったら、またちゃぶ台引っくり返すだろーが)


父曰く「お前、なんで(うちに)居るんだ?(転寝から目覚めた時の台詞)」

  (あんたが呼んだからでしょ。

    ……てか、さっきからずーっとお世話してるし)


   これくらいならまあ、

     ウォーミングアップレベルってとこでしょうか。

  酷いのは昼夜の区別が付かない時、

    そして、曜日の感覚が鈍っている時です。

   先日も同居の姉の居ぬ間に、

    ちゃぶ台が豪快にひっくり返されていたようで……。

  
  呼べども返事がない、呼べども駆け付けてこない、

     呼べども父親の俺様を無視し続けている……。

   勝手にそう思い込んだ父、

  齢八十、ありったけの力を振り絞り、

    重量級のちゃぶ台をひっくり返したようです。

  時は平日の真昼間、当の姉は会社で仕事中だというのに……です。

 恐らくその後、父もさすがに「平日の午後、娘は会社だ」と理解した筈です。

   それでも返したちゃぶ台を戻すこともなく、

  飄々とやり過ごしていたかと思うと殺意すら覚えてしまいます。

    あ、父に殺意を抱くのは幼少期以来のことなので、

       自身は戸惑いすら覚えていません。


   私の記憶にある限り、

  父という人間は、決して自分の非を認めず、

    他人が正そうとすれば更に意固地になり、

   酒が入っていれば殊更に性質が悪く、

 そこらの物を破壊し、周囲の人間を甚く傷付けてきました。

  そんな父の記憶力や理解力が著しく衰えた今、

   「アンパン屋」は「アンパイア」違いだよなんて

   笑って済ませられる程度のものならまだしも、

  今後どれほど重度な思い違いが、

    父と私たちとを隔絶させるかと想像すると、

   日々気を病むばかりで大切なことも手に付かず、

     父からの電話を怯えながら待つ私は、

  今日もまた、一日を無駄にやり過ごしてしまうことになるのです。


    今日昼過ぎに来た父からの電話、

「明日か明後日か分からないけど、都合がつけば行くから」と返した私の言葉、

父の中では既に「明日来る♪」と誤変換されているに違いありません。

老齢の父が自身に都合よく脚色を加えながら誤変換してしまうことで、

   今後も悶着が増えることはあれ

 減ることなど期待できそうにないのです。

     父の思い違いや記憶違いを丁寧に掬い上げ、

 どこまで手を差し伸べて行けるかが今後の私たちの課題です。





    土曜日、所用で神田明神を訪れました。

  

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      発つ頃には陽が落ちてきていましたが、

          燈明が灯り更に美しさを増していましたね。


   
  古いお守りを古神札納め所に納め、

     新しいお守りをいただきました。


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       おねがい兎の御守です。

   
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 願い事を記した短冊を託すとウサギさんが大国様に届けてくれる……のだそうです。

      因幡の白兎の故事にあやかった御守です。 




   
   最近のたもやん。



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          ワンコも花を愛でるんです。




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          ここまでは3月19日。




     今日の桜、


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        そろそろ葉桜になってきました。




    河原のソメイヨシノは、まだまだ蕾も硬いです。


  
  ※みなさんのところへなかなかお邪魔できないような状況です。

    たまに押し掛けても読み逃げばかりですみません 






キルビルじゃあないけれど

    電子音が、苦手です。

 プルッ。プルルルル。トゥルルルル。

      そんな音のことです。

  なんとなく想像がつく方もいるかと思いますが……。

    苦手なのは、電話の呼び鈴の音です。

電話の呼び鈴、これ正確には電子音ではないそうなのですが、

 つけっ放しのテレビの中から不意に襲いくるその手の音は、

   小心者の私の心臓をいつも深く抉ります。


  なぜその手の音が苦手なのか……。

   理由は、実家の父です。

 静か過ぎるこの部屋に電話の呼び鈴が鳴り響く度、

  急激に溢れ出した胃酸は私の胃壁を溶かし、

   激しく打ち始めた胸の鼓動は

 受話器の向こうの父の耳にも届かんばかりに勢いを増します。
 
    父からの電話は黒い予兆。

 電話を掛けて寄越すということは一杯飲んでいる証。

   飲んでいる時の父は、ロクデナシです。

  どれだけロクデナシなのかは、

    これ、書き切れないので割愛します。
  

  結婚を機に家を出た私と父とを繋ぐもの、

    それは家の固定電話のみでした。

 子離れのできない親の元を離れ7年以上、

    それでも父が自ら受話器を取り

私のところへ連絡を寄越すことはありませんでした。

   そこは娘の住まう家、

 ですがそれ以上に、そこは娘の夫君の領域であるという意識が、

    昔気質の父の中では強かったからなのでしょう。

携帯電話を器用に操り娘と他愛もないやり取りを繰り返す

          母に羨望の眼差しを送りながら、

 昔人間の父が自らもその文明の利器に挑もうとすることはありませんでした。

そんな父が意を決し受話器を手にするようになったのは、

    母が病に臥せってから。

  「病院で(病状を)何て言われてきた?」とか、

「『じっとしてろ』と言ってるのに(母が)言うことを聞かない」とか。

 そんな電話も、告げられた余命を全うせずに母が逝ってしまうと、

    その後暫くは鳴りを潜めていた訳ですが……。


   新聞を繰り庭を眺めて過ごすだけでは、

    寂しがりの父にはその一日も長過ぎるようで、

暫くすると、意味もなく私のところへ電話を掛けて寄越すようになりました。

 そして、そんな電話を寄越すのは決まって夕刻から夜8時までの間。

    一杯飲んで気が大きくなっていることと、

      もう一つの理由は、

 その時間であれば夫が不在と容易く想像ができたからです。

    婚家を煩わせることは娘の為にならない、

  娘を持つ多くの父親がそうであるように、

   父もまたそういった部分の感性は繊細でした。


   ……ですが、父のその繊細さも、

 やがて、老いが蝕んでいくようになりました。



  朝7時、例の電子音が鳴り響きます。

私「あのさ、朝……なんですけど」

  (本当は「朝っぱらからなにさ」と言いたい)

父「へ? 朝だろ?」

  (「もう朝だし、なにか不服でも?」って気持ちがアリアリ)

私「朝ですけどね。まだ寝てましたっ!」

  (起きてもいい時間だけどさ、今日はそんな気分じゃない訳よ)

父「寝てたぁ? へぇえぇーっ!?」

  (相手を苛立たせるに充分な大袈裟過ぎる反応)

  結局のところ、たいした用などないんです。

父「今度いつ来るぅ?」

私「あー、明日行くよ」
 
父「そう?(嬉) じゃあね」

  (……って、それだけかよ!)


 夜中の3時に呼び鈴で叩き起こされた時には、

  怒り狂う気力も出ませんでしたね。

私「夜中だよ」

父「へぇ?」

私「夜だよ、夜。真夜中ですっ!」

父「へぇ、昼かと思ったぁ。え? 夜だってぇ?」

私「真夜中です。寝てました」

父「だってぇ、……昼かと思った」

私「……夜だから」

父「はい、ごめんなしゃい」

  (……っつーか、カーテン開けて外見てみろって!)


 もう数週間が過ぎましたが、こんなこともありました。

  遠くに響くはあの電子音。   

 ん? 夢ですか……。あれ? 夢じゃないよね。

  鳴ってる? あぁ、確実に鳴ってるね。

  
    おのれーっ!!!


私「はい(思いっ切り低い声)」

父「おはよ」

私「朝だよ(抑揚のない返し)」

父「朝でしょ」

  (真っ当な時間でしょ?って気持ちがアリアリ)

私「まだ朝だよ」

  (早過ぎるって意味だからっ!)

父「もう6時だぞ」

私「……。今日(そっちに)行くから」

父「へ? 今日来る?」

  (その高揚感、反ってイラつくわ)

私「……切るよ」

父「はいはい」

  (語尾に♪が見え隠れして苛々も募るってもんよ)


  遅れて起床した夫に、つい提案しました。

私「もうさ、『(固定)電話壊れちゃった』って言おうか」

夫「そんなぁ、言わなくていいよ」

私「今まで言ったことなかったけど……。

    こっちから『切るよ』って言っちゃったよ」

夫「もしかして、それが

   『キルユー(KILL YOU!)』って聞こえたんじゃない?」


            ! ! !


私「そう聞こえたんなら、それはそれでいいよ。

   ……てか、その意味分かってくれたんなら、

     寧ろ有り難いくらいなんだけど」

夫「そんなこと、言わない言わない」


  寛容な夫はそう言って私を宥めますが、

   胸のうちにどす黒いものが渦巻く私は、

父に「KILL YOU」の意味を叩き込む手立てに頭を巡らせるばかり……。

  
    父からの電話……、

それは、例えようのない劣等感と

  大いなる敗北感で私を打ちのめします。

 たかだか電話、そうたかだか電話のことなのです。

   ……ですが、その電話を掛けて寄越すということは、

  父が酒の誘惑に負け、判断力を鈍らせ、

     今まさに人格すらも豹変させているということ。

 そして、父のその傍若無人な所業は、

  夫の両親が決して見せることのない振る舞いだからなのです。

 私は恐らく、父のことを恥じているのでしょう。

    そして、父親のことを恥じ入る私は親不孝者です。




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    実家の紅梅が咲きました。2月6日の撮影です。




    いよいよ「傘寿」の誕生日を迎えた父。

  常に自信に満ちていた父にも、

   老いは確実に忍び寄るものですね。

  このところの父の様子を見るにつけ、

   「電話機が壊れたから」とも、

 「変な時間に電話しないで」とも、

   無論「キルユー」などという雑言も、

  最早意味を持たない台詞なのだと感じます。

   今はただ、電子音に鈍感な心臓を持つことと、

 「キルユー」などと口を滑らせないことを肝に銘じ、

 時の過ぎるのを見送るより外ないのだと感じています。

   本当は、

「バッチコーイ!」って気持ちを持てればいいんですけどね。




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             2月7日の河津桜。



     先週末の吹雪にも負けず、


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         一つ、また一つと開いています。



   

その人の死に方

    その人の死に方について、

      想ったことはありますか?


   母を病気で亡くし2年半あまり、

     我が儘言って家族を振り回す、

  その癖人一倍寂しがり屋で家族に甘えたがる、

    ちょっぴりメンドーな父のご機嫌伺いに、

 週に1度は実家を訪れています。

   母を亡くした当初、

 家族を喪った寂しさが紛れるようになるまではと、

    父の様子を見に実家を訪れていた訳ですが、

 それも、週に1度が2週に1度になり、

   いずれは月に1度というように、

徐々に以前よりの適度な距離感を取り戻せるようになればと

      考えていたんですよね。


      それが……。

   飲み過ぎては姉の手を焼かせてみたり、

 記憶のないままに肋骨にヒビを入れてみたり、

  「寂しくて堪らない」と私を呼んでみたり……。

      とにかく、

    父を安心して放置……、

   否、遠くから見守ることを、

 一切私にさせてくれようとはしないのです。

 そりゃね、父親を見捨てるつもりなんか毛頭ありませんよ。

  けどね、四肢に問題がある訳でも、

内臓に疾患がある訳でもない(だろう)父には、

     いい加減しっかりしとくれよーっ!

       と、説教したくもなりますよ。

     世の中には、

白寿を過ぎても尚畑仕事に精出すお年寄りもいますよね。

   夫は「人それぞれ」と言うけれど、

     どんだけ甘ったれなんだよっ!

    と、喝を入れたい衝動に駆られてしまいます。


    そんな父の元を訪れ、

 寂しがりの父を放置し道路掃除に勤しんでいると、

  近所の方と立ち話をする機会に恵まれます。

 (やたら)社交的だった母には知り合いも多く、

「お母さんにはお世話になったのよ」と、

   懐かしく母のことを話してくださる方も多いのですが、

 このところ私の心を捉えて離さないのはこんな話題です。


   
   「どうやって、死ぬつもりなんだろ?」

  これ、自ら……って意味じゃないですよ。

 「もう、心配なのはそれだけなんだよね。

   お父さん、いったいどう死ぬんだろう……って」


こう話すのは、母と親しく付き合いのあった近所の女性です。

  私の両親より10歳ほど歳下のこのご夫婦、

     妻である彼女が、

 当分先であろう夫の最期について憂いているのです。

  先ほど「お父さん」と書いたのは、

    これ、ご主人のことですね。

  「も~、どうするつもりなんだろうねぇ」

 「これからどうなって行くんだろ? 寝たきり?

   それも困るよねぇ、老々介護になっちゃうもん」

  「本人は、どう死ぬつもりなんだろうね」

 「どうやって死にたいか、考えといてほしいよね~」


    そ、そんなに?

      今から?

          死ぬときの心配?


   彼女の言わんとしている事は、分かります。

     どうやって死ぬって、これ、

  決して死に際の話じゃあないんですよね。

    子供たちも独立してしまった今、

 衰えつつある体力と向き合いながら夫の行く末を想うことが

   どれほど苦しいことかは想像に難くありません。


  「うちのお父さん、どうやって死ぬと思う?」

     いやいや、そんな話私に振られても(汗)

「そんな心配、まだまだ要らないでしょ?」

  「そんなことないよぉ、あっと言う間だよぉ。

    困るよねぇ、どうしたいと思ってるんだろ……」

  いやいや、その辺りは夫婦で話し合った方がいいかと(汗)

      
     頭を抱えながら彼女、

  唐突に、こんな質問を投げ掛けてきましたよ。


  「お父さんは?(私の父のことです)

      お父さんには、

  これからどういうふうになっていって欲しいと思う?」

     
     へ? うち、……ですか?


「うちは……。

  うちは、施設とか絶対行かないと思うんですよねぇ。

 ……かと言って、介護の人が家に入るのも嫌がると思うし」

  「だよねぇ。お父さん、そんな感じだよねぇ。

    うちもそう、介護の人とか入れないと思う。

   男の人は困るよねぇ、どうするんだろ……」

「けど、まだまだそんな心配要らなくない?」

  「ダメダメ、何があるか分からないもん」

  ですよね、ですよね。

 うちも、100歳まで生きそうだった母が、

   あんなに早く逝っちゃいましたからね。


  「お父さんは(私の父のこと)、どうなるんだろうね」

「う~ん。

   うちは……。

  うちは、ぽっくりがいいなぁ、ぽっくりが」


  ※ ぽっくり : 人が突然に死ぬさま


  「えぇっ? ぽっくり?」

「だって、病気とか怪我とかで長患いするより、

  苦しまないままぽっくりの方が本人も辛くないと思うし」

無責任かつ無慈悲な物言いだっていうのは自覚してます。

  「そんなぁ、思ってる通りになんかならないよぉ」

「まあ、そうなんだろうけど。

   本人も『俺もよく生きた!』って言ってるし、

  おかーさんに置き去りにされたこと恨んでるし」

 これ、本当です。

    「俺より先に逝きやがって!」と、

 父は時折仏壇の母に向かい、恨み言を吐いているんです。

  「そっかぁ。お父さん、お母さんにベッタリだったもんね」


掃除の手を止め、部屋で待つ父のこともすっかり忘れ、

    そのまま一頻り彼女と会談。

そんな中、彼女がふと漏らしたひと言が私の胸を突きました。

  「お父さん、なんでも『子供が一番!』だったもんね。

     お菓子貰っても『まずは子供から』って……」



   確かに、父はそういう人でした。

  あ、「でした」じゃオカシイですね。

 確かに父は、「子供が一番」そういう人です。

 
  飲んだくれては悪態つく父の姿を思い起こし、

 「ぽっくり希望」などと軽口叩いたことに自己嫌悪。

人の死に方なんて本人ですら思いのままにならないこと、

   外野の人間が軽々しく口にすることではありません。

  ただ、この先どうなって行くのか、

本人が幸せと思う最期を迎える為に何ができるのか……、

    そんなことを想うと、

  「いったいどうやって死ぬんだろ」と

       呟いてみたくなる私もいるんです。


   その人の死に方、

考えても、恐らく答えは見つからないでしょう。

 今はただ生きる支えになってあげることだけが、

  その人の死に方の助けになるかもしれないと、

 取り敢えず、今日の私はそう思っています。

明日はまた別のことを思ってるかもしれないけれど。

   

   

    
    ここ数日のたもやん 



  先週の木曜日より、吐くことが一切なくなりました。

 水曜日に先生にお伝えしたところ、

   「山は越えたかな」と言っていただきました。

  投薬は続けていますが、

    確実に快復に向かっているようです。

 

   
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          ワンコ動画に目が釘づけの坊ちゃん。




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             なにこれ~?





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       薬を飲まされ、ご機嫌斜めな坊ちゃん。



    たもちゃん、あと少し、ガンバロー 




     
プロフィール

たもこ

Author:たもこ
生後2ヵ月で我が家にやってきた柴犬たもつ。
日々進化を続けるたもつと彼に翻弄される犬素人夫婦の日常を綴ります。
旧名たもつ先生です。
たもつ ♂ 
2007年10月19日生まれ

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